「音楽堂ヴィルトゥオーゾ・シリーズ」第3弾として、バロック音楽の真髄を追究してやまないベルギーの古楽演奏家シギスヴァルト・クイケン率いる古楽器アンサンブルの最高峰「ラ・プティット・バンド」が初登場します。
今回の公演では、絶え間ない研究と天才的な閃きを通して常人には考えも及ばない成果を引き出してみせる巨匠シギスヴァルト・クイケンの手で、新鮮によみがえるヴィヴァルディの魅力をたっぷりとお楽しみいただきます。
本公演では、最近の研究成果を踏まえ《ひとつのパートは一人の奏者で》という考えに則って演奏されます。また、通常のチェロではなく、バロック時代の「肩にかけて演奏するチェロ(ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ)」が使用されます。勿論、当時の音楽の命であった即興的なパッセージに彩られた卓越した演奏であることは言うまでもありません。
こうして蘇るバロック期のサウンドで聴く《四季》のはっとするほどの鮮やかさ…。
音楽堂のクリアな音響の中で、ヴィヴァルディの新しい魅力と出会うひとときを、どうぞご体験ください!
この4年間、ラ・プティット・バンドは、バロック・アンサンブルの演奏概念に改革を重ねてまいりました。歴史的な考証に基づいた「ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ」の再導入は、音楽界に一種の革命的な影響を及ぼして、そのインパクトはいまだとどまるところを知りません。この忘れられていた楽器をあらためて使用することに関しては、バロック期の弦楽器全体について、そしてまたそれらの使用法について、重要かつ決定的な再評価がなされているのです。
最近の調査研究によって、今日あるほとんどのバロック期の室内楽曲は、多くの奏者が一緒に演奏することを想定してはいなかったことが明らかになってきています。十数人のイタリアならびにドイツのバロック期の作曲家たちによる数百ものコンチェルトは、少ない人数で、特に「ひとつのパートはひとりの奏者で」演奏されたものと考えられます。とりわけ、あの『四季』を含む、ほとんどのヴィヴァルディのコンチェルトではそのように考えられるのです。実際これらの楽曲ならびにそのような傾向の多くの作品において、作曲家は、低音部を補強するための「ヴィオローネ」ではなく、「ヴィオロンチェロ」を求めたのです。このことは、これらの作品においてはどのパートにも二人の奏者はいないことをほのめかしています。
ヴィヴァルディの『四季』は今日最もよく演奏されるバロックの協奏曲であることは疑いもありません。そしてそれゆえに「ひとつのパートはひとりの奏者」、そして、チェロではなく「ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ」の使用、という純粋かつシンプルなコンセプトの最も衝撃的な証しを示すものとなるのです。
私たちは、この新鮮な視点とまったく新しい音の効果を日本のみなさんに披露できることを、たいへん幸せに思っています。ヴィヴァルディの『四季』は今日、世界各地の演奏会であまりに頻繁に演奏され、その価値は貶められてしまっています。私たちは、私たちの義務として、そして芸術の真実の追求のためにも、そのオリジナルな特徴を保存していくことが必要であると考えています。
みなさんは、この作品が実に「マドリガーレ(イタリアの世俗歌曲)的」であり、色彩ゆたかで、そして透明感にあふれたものであることを、驚きをもって再発見されることでしょう。そして、もしもみなさんが、この作品について「知り尽くしている」と考えておられるなら、そのお考えを変えていただくことになるでしょう・・・。
シギスヴァルト・クイケン
[プログラム]
オール・ヴィヴァルディ・プログラム
「四季」〜ヴァイオリン協奏曲集「和声と創意の試み」より
「ラ・フォリア」 2つのヴァイオリンと通奏低音のためのソナタニ短調 op1 No.12リコーダー協奏曲 ハ短調 RV.441
チェロ協奏曲 ニ長調 RV.403
ピッコロ協奏曲 ハ長調 RV.444
[出演]
ラ・プティット・バンド(古楽アンサンブル)
シギスヴァルト・クイケン(音楽監督、ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ)
サラ・クイケン、マコト・アカツ、アンネリース・デコック(ヴァイオリン)
マルレーン・ティールス(ヴィオラ)
ペーター・ファン・ヘイヒェン(リコーダー、ピッコロ)
ベンジャミン・アラード(チェンバロ)
*出演者・曲目はやむを得ず変更になることがございます。
[プロフィール]
ラ・プティット・バンド
1972年S.クイケンとG.レオンハルトにより結成されたバロック・オーケストラ。その名称と構成は、ルイ14世の宮廷におけるリュリのオーケストラにちなんでいる。当初はリュリ、カンプラ、ムファットなどフランス音楽をレパートリーとしていたが、今日ではイタリア、ドイツ・バロックから古典派にまで及び、基本的な楽器、演奏法、時代背景の研究による普遍的な演奏様式と解釈を導き続けている。S.クイケンは長年にわたり古典派のレパートリーにも関心を持っており、ことにハイドンとモーツァルトの録音を通じて、国際的なクラシック音楽紙から高い評価を得ている。録音も幅広く、ラモーとヘンデルのオペラ、J.S.バッハのミサロ短調、ブランデンブルク協奏曲、ハイドンの「天地創造」、ロンドン交響曲全曲など精力的に行っている。最近では、バッハのカンタータ全曲録音にいどんでおり、すでにリリースされている5枚のアルバムはいずれも高い評価を得ている。ヨーロッパ各地の主要な音楽祭、コンサートホールにも常に登場しており、その自然で美しい演奏は現在増えてきているオリジナル楽器のオーケストラのパイオニアにして最高峰と称されている。